聖書の言葉 幼稚園保護者向け

2023年3月までの文章は菊池牧師、2023年4月からは小林美恵子牧師による文章です。

2021年 10月

「あなたの御名は、いかに力強く、全地に満ちていることでしょう。」   

詩編8編2節)

「あなたの御名は」とありますが、「神様のお名前は」という意味です。いきなりですが、一つ困ったことがあります。聖書の中に「神様の名前をみだりに唱えてはならない」という大切な教えがありますので、人々は、長い間神様の名前をめったなことでは唱えませんでした。その結果、神様の本当の名前が何か分からなくなりました。今も神様の名前については諸説ありますけれど、確実な名前の呼び方はわかりません。

なぜ名前を呼ばなくなったのかというと、名前はそのものを限定してしまうからです。私たちはそれぞれに名前があります。私は「きくちたけひろ」であり、園長は「さたけわへい」です。「さたけわへい」と聞いて、菊池牧師の顔を浮かべる人がいないように、名前はその人を限定し、その人と、その人以外とを区別します。神様に名前があると、神様を限定し、神様の働きを場所的、時間的に限定してしまかもしれません。神様は時間や場所を越えて働かれる方ですから、名前が無いほうが良かったのかもしれません。

でも、それでは神様の実態も良く分からないのでないか?ともなります。けれど、今月の詩編のみ言葉はそうではないと答えているのです。「あなたの御名は、いかに力強く、全地に満ちているでしょう。」とあります。聖書は神様を、天地万物の創造主として伝えます。宇宙、大自然、その中にある様々な要素、空気、水、火、大地、そして生き物の命、特に人間の命、これらの全てを神様は創造されました。画家が完成した作品に自分の名前を小さくサインするように、神様の作品にも神様の名前が小さく入っているのです。つまり、それらは皆、尊く、勝手に扱うことは許されません。自然破壊や、環境汚染は神の創造を破壊し、結局それは人の命を脅かすことにもなります。

私たちの人生にも、神様の御名が刻まれています。結婚は、出会った人との中でしか結婚できないと言われますが、その出会いは決して偶然ではありません。キリスト教に「偶然」という言葉はありません。神様の御心、神様の思いだけが実現していくのです。あなたの妻、あなたの夫、あなたの子ども、あなたの家族は、神様の思いが結実した姿です。神様の御名が力強く、全地に満ちていくために必要なことは、連れ合いを愛し、子どもを愛し、家族を愛し、自分自身を愛することです。

エス様は聖書の中で、神を愛する事、隣人を自分と同じように愛する事、この二つこそが、最も大切な教えであると話されました。愛が忘れられたところでは、対立が生じます。対立は神の創造を分断してしまうかもしれません。大切なのは妥協でもなく、諦めでもなく、服従でもなく、愛することです。それこそが、対立を防ぎ、且つ、神の御名が力強く、全地に満ちるための唯一の方法だと私は思うのです。