聖書の言葉 幼稚園保護者向け

2023年3月までの文章は菊池牧師、2023年4月からは小林美恵子牧師による文章です。

2021年 9月

「わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」   

ヨハネによる福音書13章34節)

 

 今月の御言葉は聖書の中でも良く知られている御言葉の一つです。でも、この御言葉は少し矛盾しています。前半の「わたしがあなたがたを愛したように」とは、イエス様が弟子達を愛したように、という意味になりますが、人々に対するイエス様の愛の表し方は、いつも一方的でした。

 礼拝のために会堂に入られると、汚れた霊に取りつかれた人がいて、霊に対して「この人から出て行け」とお叱りになったら悪霊が大声をあげて出て行ったという話があります。重い皮膚病を患っている人に対して「清くなれ」と言われると、たちまち重い皮膚病が癒され清くなったという話があります。生まれつき目の見えなかった盲人を癒したという話もあります。あるいは、当時イスラエルから差別されていたサマリア人の5回結婚生活に失敗した女性の側にいて心を癒したり、姦淫の罪を犯し、捕らえられ命の危機となっていた女性の側にいて命を守ったり、徴税人で街の嫌われ者であった人の家に喜んで泊まりにいったり、誰もが分かるようにと沢山のたとえ話をしてくださったりして、人を愛する大切さを教えてくださいました。

 イエス様の愛はいつも一方的です。一方的とは、「見返りを求めない」という意味です。愛し、癒し、共にいてくださり、励まし、祝福を与え続けます。その人の存在を大いに喜び、生きる希望と社会で生きていく勇気を与え続けてくださいます。

 そのようにして、後半の「あなたがたも互いに愛し合いなさい。」と続きます。でも「互いに」という言葉を、「お互い様」とか「Give&Take」の意味として読んでしまうと矛盾する読み方になってしまうのです。互いが互いを一方的に愛することが大切です。つまり見返りを求めない愛が人を生かすのです。

 子どもが親を絶対的に信頼しているのは、親の圧倒的で、一方的で、無尽蔵の愛が、生まれてからずっと与えられているからです。その愛に少しも疑うこともなく育つ子はきっと健やかです。幼稚園の誕生会で、子どもが親と握手して「ありがとう」と言いますが、なぜ「ありがとう」なのか分からない子のほうがずっと多いはずです。でも、それで良いと思います。

 神様の一方的な愛が、どんな状況でも私達を力付け、励ましてくださるように、私達も愛を与える人として生きていきたいものです。コロナ禍の中、社会が緊張し、硬直しています。不安と不満が渦巻いています。そのような状況でこそ愛を与える人は求められています。あなたもその一人となって、笑顔と元気で愛の配達人として、この時期過ごしていきましょう。