聖書の言葉 幼稚園保護者向け

2023年3月までの文章は菊池牧師、2023年4月からは小林美恵子牧師による文章です。

2013年 12月

「エフラタのベツレヘムよ。お前はユダの氏族の中でいと小さき者。     お前の中から、イスラエルを治める者が出る。」 
 (ミカ書5章1節)
                   
 御子イエスの誕生は、ローマ帝国の皇帝アウグストゥス(在位BC27-AD14)の時代です。当時、皇帝が全領土の民に「住民登録をせよ」との命令を出しました。理由の一つは、兵隊として戦力になる民の把握の為、もう一つは税金がどれだけ徴収出来るのかの調査です。実は、どの時代の、どの国も国勢調査が行われる意味の一つはそういうことだと私は思っています。
 その為に、父ヨセフは自分の町に帰らなければなりませんでした。しかも、身重のマリアを抱えての旅です。その旅の大変さは想像に難くありません。けれど不思議なことに、この旅は別の側面もありました。一つはマリアの出産が地元のガリラヤではないことです。つまり、婚約はしていても完全に夫婦ではない二人にとって結婚前に子どもが誕生すると、肩身が狭い思いをすることになったでしょう。その為に、出産前にヨセフの故郷であるベツレヘムに到着して、出産後も暫くその場で生活をし、それからガリラヤへ帰れば嫌な噂や非難の視線を受けずに済むことになります。当時、何年何月何日、何時何分誕生などと母子手帳に記されることもなかったでしょうし、相当アバウトであったことは間違いありませんから、二人にとって嫌な思いがかなり軽減されたはずです。そんなことを考えれば、少々無理をしても国勢調査は二人にとっては幸いであったとも言えるのです。
 また、それだけでもありません。ベツレヘムで御子イエスが誕生しなければならなかった最大の理由は聖書にそう書かれてあるからです。「エフラタのベツレヘムよ。お前はユダの氏族の中でいと小さき者。お前の中から、イスラエルを治める者が出る」。旧約聖書のミカという預言者がそのように預言していました。エフラタとは、ベツレヘムの古い名称です。ベツレヘムは随分古い時代からあった町でした。大きな町ではなかったと思いますが、しかし、何よりもイスラエルの民が愛していた偉大なダビデ王の出身地でもあり、聖書には「ルツ記」という美しい物語が記されていますが、その主人公の一人、ナオミの出身地でもありました。聖書に登場する町の中にあっても、特別な町であったことは間違いありません。
預言者ミカは御子イエスが誕生する700年以上も前に、このベツレヘムから私たちの救い主が誕生すると預言しました。その預言が成就するために、御子イエスベツレヘムで誕生しなければなりませんでした。そして、そのことは当事者のヨセフやマリアは勿論知らなかったでありましょうし、ローマ皇帝も、この時の自分が出した勅令が神の計画の中にあるなどと夢にも思わなかったでしょう。
しかし、全ての条件が揃い御子イエスは、ダビデ王と同じユダ族という部族の民として、生まれるべくして生まれて来られたのです。それがクリスマスの出来事です。
なんの為に?私たちに「平和」をもたらす為です。平和な社会に必要なことは、武器や兵力を持つことではありません。権力を誇示することでもありません。大量破壊兵器によって「平和」はもたらされません。平和は「平和」という手段からしかもたらされないのです。御子イエスの誕生は人から見れば小さな誕生です。けれど神はこの方に、神の「平和」を示されようとしました。皆さん、「平和」に過していますか。より一層「平和」に過す為に、誰もが御子イエスの誕生を、私たちが心で感じることが出来ますようにと切に願います。